コーヒースタンド向け物件は、広さや家賃だけで決められません。契約前に予定メニューと営業形態を整理し、貸主の営業用途承諾、給排水・電気・換気等の工事可否、地域の保健所・消防・建築関係窓口への確認、総費用まで照合します。「以前も飲食店だった」「テイクアウト中心」「二槽シンクがある」だけで営業可能とは判断できません。

物件探しは5段階で進める

  1. 営業計画:提供する飲料・食品、店内飲食/持ち帰り、席数、営業時間、使用機器、仕込み場所を決めます。
  2. 立地調査:想定客が通る時間帯、視認性、競合、搬入、近隣、看板制限を現地で確認します。
  3. 設備確認:給排水、手洗い・洗浄、電気容量・回路、換気、防火、廃棄物置場を図面と現物で照合します。
  4. 費用比較:家賃だけでなく、共益費、保証金、仲介、譲渡費、改装、設備、原状回復まで同じ期間で比較します。
  5. 契約前確認:貸主、保健所、消防、必要に応じ建築関係窓口へ計画を示し、契約・工事前に確認結果を書面化します。

営業計画を一枚にまとめて相談する

項目 記入する内容 相談先へ伝える理由
メニュー コーヒー、乳飲料、焼き菓子、調理食品等 必要な許可・設備・衛生管理が変わる
提供方法 持ち帰り、店内席、デリバリー 「テイクアウトなら許可不要」とは限らない
仕込み 店内か別施設か、食材の保管 作業区分・冷蔵・洗浄設備の確認に必要
機器 エスプレッソマシン、グラインダー、冷蔵庫、給湯、IH等の型番と電力 電気容量・回路・給排水・換気を判断
人員・営業時間 同時作業人数、営業・搬入時間 動線、近隣、契約制限を確認

内見で使う確認表

確認項目 現地で見ること 確認先 確認資料・記録
営業用途の承諾 コーヒースタンド/飲食店として使えるか 貸主・管理会社 募集条件、賃貸借契約案、用途条項
給排水 管径・位置、排水勾配、増設可否、漏水履歴 貸主、設備業者、保健所 設備図、工事区分表、見積
手洗い・洗浄設備 位置、数、寸法、給湯、使い分け 所管保健所 平面図、設備表、予定メニュー
電圧・容量・回路 100/200V、契約容量、分電盤、専用回路、増設可否 貸主・電気工事業者 機器仕様書、単線図、工事見積
換気・排気 既存ダクト、排気経路、におい・熱、穴あけ可否 貸主・設備業者・関係窓口 設備図、建物規約
消防・避難 火気、収容人員、避難経路、消防設備の移設要否 所管消防署 平面図、機器リスト、工程表
搬入動線 階段・エレベーター、扉幅、搬入時間 管理会社・施工業者 実測、搬入計画
廃棄物 保管場所、回収契約、排水・コーヒーかす 管理会社、自治体、回収業者 建物ルール、見積
看板・外観 設置位置、サイズ、照明、原状回復 貸主、自治体、必要な関係窓口 看板規程、図面、承諾書
営業時間制限 開閉店、搬入、音・においの制限 貸主・管理会社 契約案、館内規則

保健所・消防・建築の確認は契約と工事の前に

東京都西多摩保健所の案内は、申請前に施設所在地を所管する保健所へ相談する流れを示しています。ただし、これは当該地域の案内であり、全国の設備基準を一律に示す資料ではありません。予定地、メニュー、平面図、機器一覧を所管窓口へ持参し、地域の基準で確認します。

消防についても、用途や工事、火気設備、建物全体の条件で必要な届出・設備が変わります。東京消防庁は、テナント入居時に工事計画や使用開始の届出が必要になる場合を案内しています。東京都以外では所管消防本部へ確認します。用途変更や建築関係の確認が必要かは、建物所在地の担当窓口と専門家に相談します。

居抜き物件で分けて確認すること

論点 契約前に確認すること 書面・証拠
設備の所有権 貸主設備、前借主の残置物、譲渡対象を区別 設備一覧、譲渡契約、写真、型番
修理負担 故障時に貸主・借主・譲渡人の誰が負担するか 賃貸借契約、設備保証
譲渡費 対象品、状態、消費税、撤去費を含むか 明細、動作確認記録
原状回復 造作、配管、ダクト、看板をどこまで戻すか 原状図、特約、工事区分
営業許可 新規申請か、事業譲渡等による承継が可能か 所管保健所の事前相談結果

東京都の案内でも、営業者変更は原則として新規申請が必要で、譲渡等は条件により地位承継が認められる場合があるため事前相談とされています。以前の店が許可を得ていた事実だけで、そのまま営業できるとは決めません。

費用は家賃と初期費用を分けて比較する

区分 主な項目 比較時の注意
毎月の固定費 家賃、共益費、固定契約料、通信、保守、人件費等 税込・税別、契約期間、更新条件を統一
売上連動・変動費 材料、包材、決済手数料、売上歩合等 一杯・一注文単位に直す
契約時の資金 保証金、礼金、仲介、保証会社、前家賃 返還の有無、償却、解約控除を確認
工事・設備 設計、内装、給排水、電気、換気、看板、機器 貸主工事/借主工事と追加工事を区別
退去時 原状回復、廃棄、解約予告期間 将来の支出として契約前に把握

損益分岐点の仮定計算

次は物件比較のための仮定で、相場・実績ではありません。

  • 月の固定費:家賃18万円+共益費2万円+その他固定費10万円+店主の労働対価25万円=55万円
  • 客単価:600円
  • 1注文当たり変動費:180円
  • 営業日:月24日

1注文当たり限界利益=600円-180円=420円。損益分岐注文数=550,000円÷420円=1,309.52…なので、切り上げて月1,310注文。1日当たり=1,310÷24=54.58…なので約55注文/日です。

この例は税金、借入元本返済、設備更新、開業時の初期費用回収を含みません。借入元本は会計上の費用と資金繰りで扱いが異なるため、月次の手元資金表でも確認します。人件費や店主の労働対価をゼロにして「黒字」に見せないことが重要です。売上計画はカフェの回転率と必要客数も参照してください。

契約前の最終確認

  • 予定する営業用途と工事について、貸主の書面承諾がある
  • 保健所へメニュー・平面図・設備を示して相談した
  • 消防署・建築関係窓口へ必要な確認をした
  • 機器ごとの電力・給排水・換気と工事見積を取得した
  • 居抜き設備の所有権・修理・譲渡・原状回復を契約へ反映した
  • 家賃だけでなく初期費用・退去費・運転資金を比較した

よくある質問

小さな物件なら許可を取りやすいですか?

面積だけでは決まりません。メニュー、作業、設備、地域、建物条件を所管窓口へ示して確認します。

二槽シンクがあれば営業できますか?

一つの設備だけで営業可否は決まりません。手洗い、給湯、保管、区画等を含む計画全体を確認します。

テイクアウト専門なら営業許可は不要ですか?

そのようには一律に判断できません。調理・製造・販売内容と地域の制度を所管保健所へ相談してください。

居抜きなら工事費は必ず安くなりますか?

既存設備が計画・基準・電力に合わない場合、撤去や更新が必要です。譲渡費、修理、原状回復まで比較します。

確認した公的資料

まとめ

コーヒースタンド物件は、営業計画、立地、設備、費用、契約を順番に照合します。地域・メニュー・建物条件で必要事項が変わるため、契約や工事の前に図面と機器一覧を用意し、貸主、保健所、消防、必要な建築関係窓口へ相談してください。