カフェインの「一日何mgまで」という数値は、全員に共通する日本の法的上限ではありません。欧州食品安全機関(EFSA)は、健康な成人について、全摂取源を合わせた単回200mgまでと、妊婦を除く健康な成人が一日を通して摂る400mgまでを「安全性の懸念を生じない」と評価しています。これは摂取目標でも、400mgまでなら誰でも症状が出ないという保証でもありません。
自分がどの対象に当たるかを確認し、コーヒーの杯数ではなく、飲み物・食品・サプリメント・医薬品に含まれるカフェインの合計を把握します。妊娠中・授乳中、子ども・青少年、持病や服薬がある人、少量でも不眠や動悸が出る人は、健康な成人の400mgをそのまま当てはめないでください。
カフェインの目安は「対象者・単回・一日」を分けて読む
カフェインの資料を読むときは、誰を対象にした数値か、1回に摂る量か1日合計か、どのような意味の数値かを分けます。「200mg」と「400mg」は同じ条件の数字ではありません。また、日本では個人差が大きいことなどから、食品から摂るカフェインについて、一律の摂取上限は設定されていません。
| 対象者 | 機関 | 量と単位 | 適用条件 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 健康な成人 | EFSA | 単回200mgまで | すべての摂取源を合わせた1回分。一般の健康な成人について、安全性の懸念を生じないと評価 | 推奨摂取量や日本の法的上限ではない。体格、感受性、持病、服薬などで反応は異なる |
| 健康な成人(妊婦を除く) | EFSA | 一日400mgまで | 一日の中で摂取した全摂取源の合計について、安全性の懸念を生じないと評価 | 短時間にまとめて摂ってよいという意味ではない。400mgまでの摂取を勧める数値でもない |
| 妊娠中 | EFSA | 一日200mgまで | 一日を通した全摂取源の合計について、胎児への安全性の懸念を生じないと評価 | コーヒー以外も合計する。個別の妊娠経過については医師・助産師の助言を優先 |
| 授乳中 | EFSA | 単回200mgまで、一日200mgまで | 全摂取源からの単回量・習慣的な一日量について、母乳で育つ乳児への安全性の懸念を生じないと評価 | 乳児の月齢や状態、母体の服薬などは個別に確認する |
| 妊娠を予定・妊娠中・授乳中 | Health Canada | 一日300mg | 同機関が示す推奨最大一日摂取量 | EFSAの200mgと混ぜて「200~300mg」という共通基準にしない。機関ごとの評価として読む |
| 子ども・青少年 | EFSA | 体重1kg当たり3mgを評価の基礎に使用 | 利用可能な情報だけでは安全な摂取量を導けないとしたうえで、成人の急性摂取から得た「懸念のない量」を単回・一日の評価の基礎に用いる考え方 | 飲んでよい量の推奨ではない。家庭で体重からコーヒーやエナジードリンクの許容量を決めない |
| 18歳以下の子ども・青少年 | Health Canada | 一日・体重1kg当たり2.5mg | 同機関が示す推奨最大一日摂取量 | EFSAの3mg/kgと合算・平均しない。成人の400mgも当てはめない |
表の数値は、各機関が特定の対象と条件について評価・提示したものです。「基準まで摂った方がよい」「数値以下なら誰でも安全」「日本でも同じ規制がある」とは読み替えないでください。持病がある人、治療中の人、薬を使っている人は、医師または薬剤師へ、カフェインを含む飲食物や製品も含めて相談します。
単回200mgと一日400mgは別の確認項目
例えば午前中に150mg、昼に120mg、夕方に80mgを摂れば、一日合計は350mgです。一方、短時間に200mgを超える製品をまとめて摂れば、一日合計が400mg未満でも「単回量」の見方が必要です。サプリメントや眠気防止薬は少ない容量にカフェインがまとまっている場合があるため、コーヒーだけを数えて終わりにしません。
就寝前は一日合計とは別に考える
EFSAは、就寝時刻に近い単回100mgでも、一部の成人では睡眠時間や睡眠パターンへ影響する可能性があるとしています。一日合計が少なくても、眠れない、眠りが浅いと感じるなら、最後に摂った時刻と量を記録し、摂取時刻を早めるか量を減らします。
コーヒーは「何杯」ではなく容量と濃度で計算する
同じ1杯でも、小さなカップと大きなマグでは容量が違います。さらに、粉量、豆、抽出方法、抽出時間、商品によって濃度も変わります。杯数だけで一日量を管理すると、実際の摂取量を見誤りやすくなります。
厚生労働省の表では、コーヒー浸出液は60mg/100mLですが、これは「コーヒー粉末10g、熱湯150mL」という条件の参考値です。家庭で淹れたすべてのコーヒーが60mg/100mLになるわけではありません。具体的な市販品に一杯・一本当たりの公式表示がある場合は、そちらを優先します。
| 飲料 | 厚生労働省掲載値 | 資料上の条件 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| コーヒー(浸出液) | 60mg/100mL | コーヒー粉末10g、熱湯150mL | 同じ濃度と仮定した計算例に使えるが、家庭の一杯を実測した値ではない |
| インスタントコーヒー(顆粒製品) | 1杯当たり80mg | 顆粒2gを使用 | 「80mg/100mL」ではない。使用量や商品表示が違えば別に計算する |
| 紅茶(浸出液) | 30mg/100mL | 茶5g、熱湯360mL、1.5~4分 | 茶葉量、湯量、時間が異なる飲み物へそのまま当てはめない |
| せん茶(浸出液) | 20mg/100mL | 茶10g、90℃の湯430mL、1分 | 市販のボトル飲料は商品表示・メーカー情報を優先する |
| カフェインを多く添加した清涼飲料水 | 32~300mg/100mL | 調査対象製品によって濃度・内容量が異なる | 幅が大きいため、カテゴリ平均でなく容器の表示を確認する |
60mg/100mLのコーヒーを容量別に計算すると
厚生労働省の掲載条件と同じ60mg/100mLと仮定した場合、150mLなら90mg、200mLなら120mg、250mLなら150mgです。計算は次のとおりです。
- 150mL:60mg × 150mL ÷ 100mL = 90mg
- 200mL:60mg × 200mL ÷ 100mL = 120mg
- 250mL:60mg × 250mL ÷ 100mL = 150mg
例えば200mLを3杯なら、この仮定上は120mg × 3杯=360mgです。4杯なら480mgになります。ただし、これは杯数の推奨ではなく、特定条件の濃度を使った計算例です。濃い抽出、複数ショット入り、市販のボトル・缶、店舗商品では、公式に示された一杯・一本当たりの値を使ってください。

一日のカフェイン量を計算する方法
計算前に、ラベルや公式情報の単位を確認します。「mg/100mL」「mg/本」「mg/1杯」「mg/1回分」は互いに違う単位です。
- 表示がmg/100mL:濃度(mg)×実際に飲んだ量(mL)÷100
- 表示がmg/本:1本当たりの量(mg)×飲んだ本数
- 表示がmg/1杯:1杯当たりの量(mg)×飲んだ杯数
- 食品・サプリメント:「1個」「1食」「何粒」など表示された単位と、実際に摂った数量を合わせる
- 医薬品:添付文書の1回量に含まれるカフェインを把握する。合計が気になっても、自己判断で用量を変更・中止せず医師や薬剤師へ確認する
一日の合計量を求める計算例
次は計算方法を示す仮定例です。特定の商品を測定した結果ではありません。
| 摂取したもの | 表示・参考値 | 実際の量 | 計算 | 加算する量 |
|---|---|---|---|---|
| 朝のコーヒー | 60mg/100mL | 180mL | 60 × 180 ÷ 100 | 108mg |
| 清涼飲料水 | 32mg/100mL | 250mL | 32 × 250 ÷ 100 | 80mg |
| サプリメント | 2粒当たり100mg | 1粒 | 100 ÷ 2 | 50mg |
| 一日合計 | 238mg | |||
清涼飲料水に「1本80mg」とも記載されている場合、同じ1本を「32mg/100mLから算出した80mg」と「1本80mg」の両方で数えないでください。どちらか一方の単位で1回だけ加算します。飲み残した場合は、実際に飲んだ量を使います。
記録は商品名・量・時刻をセットにする
「コーヒー2杯」ではなく、「8時・コーヒー180mL・参考108mg」「13時・缶飲料250mL・表示80mg」のように記録します。食品や菓子はパッケージの一食量、サプリメントは粒数、医薬品は製品名と服用時刻も記録すると、重複を見つけやすくなります。ティラミスなど菓子の数え方はティラミスに含まれるカフェインの考え方で説明しています。
妊娠中・授乳中は同じ数値として扱わない
妊娠中
EFSAは、妊娠中に全摂取源から一日を通して摂る200mgまでについて、胎児への安全性の懸念を生じないと評価しています。一方、Health Canadaは、妊娠を予定している人・妊娠中の人に一日300mgの推奨最大量を示しています。これらを「200~300mgまで」という一つの共通基準へまとめず、機関と条件を分けて読みます。
コーヒーだけでなく、お茶、カカオを含む食品、コーラ系飲料、エナジードリンク、サプリメント、医薬品も確認します。妊娠経過、持病、服薬に応じた制限は、担当の医師・助産師へ相談してください。
授乳中
EFSAの科学的意見は、授乳中の女性が全摂取源から摂る単回200mgまでと習慣的な一日200mgまでについて、母乳で育つ乳児への安全性の懸念を生じないとしています。Health Canadaの表では授乳中の推奨最大一日摂取量は300mgです。これも同一基準ではありません。
乳児の月齢や状態、母体の体調、使用中の医薬品によって確認事項は変わります。授乳の時刻だけを調整すれば必ず影響を避けられるとは断定せず、心配があれば医療従事者へ相談します。
子ども・青少年は成人の400mgを当てはめない
EFSAは、子ども・青少年について、安全な摂取量を導くには情報が不十分としたうえで、成人の急性摂取から得た体重1kg当たり3mgを、単回量と一日量を評価する基礎にできるとしています。Health Canadaは、18歳以下に体重1kg当たり2.5mg/日の推奨最大量を示しています。二つの数値を平均したり、「2.5~3mg/kgなら飲んでよい」とまとめたりしません。
子どもの体重を入力して「飲めるコーヒーやエナジードリンクの量」を求める使い方もしません。厚生労働省は、カフェインを多く添加した清涼飲料水について、子どもは表示をよく確認し、飲用を控えることや、他のカフェイン含有製品を重ねないよう注意を促しています。年齢、体調、睡眠、不安、動悸などが気になる場合は、保護者が医療従事者へ相談してください。
持病・服薬・カフェインへの感受性がある場合
同じ量でも、不眠、落ち着かなさ、動悸、手の震え、胃の不快感などが出る人と出ない人がいます。FDAも、体重、使用している薬、健康状態、個人の感受性などによって「多すぎる量」は変わると説明しています。症状が出る人は、表の最大量を目標にせず、少ない量でも追加摂取を止めて記録します。
カフェインを含む眠気防止薬、かぜ薬、鎮痛薬などもあります。厚生労働省は、添付文書を読み、カフェインを含む飲料との同時使用を避ける注意がある製品では、その用法・用量を守るよう案内しています。飲食物からの合計が気になる場合も、処方薬や市販薬を自己判断で減量・中止せず、医師・薬剤師・登録販売者に製品名を伝えて確認してください。
摂りすぎが心配なときにすること
厚生労働省は、過剰摂取で、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、下痢、吐き気などが生じる可能性を挙げています。症状の有無や重さだけで摂取量を逆算することはできません。
- 追加のカフェインを止める:コーヒー、エナジードリンク、サプリメント、眠気防止薬などを重ねません。
- 商品と摂取状況を残す:商品名、容器、表示、摂った量、時刻、症状が始まった時刻を記録します。
- 水・運動・飲酒を解毒法にしない:水を大量に飲む、汗をかく、アルコールを飲むことで急速に無害化できるとは案内されていません。無理な自己対処を重ねません。
- 症状がある場合は受診する:日本中毒情報センターは、カフェインを含む食品や眠気防止薬の過量摂取で症状がある場合、すぐに医療機関を受診するよう案内しています。判断に迷う場合は中毒110番へ相談します。
意識の異常、けいれん、呼吸が苦しい、強い動悸など緊急性が疑われる場合は、記事を読み続けず119番へ連絡してください。摂取した製品の容器や包装を手元に置き、救急・医療機関の指示に従います。
一日の量を減らす実践方法
まず3~7日程度、商品名、容量、カフェイン表示、時刻を記録します。多かった日だけでなく、眠れなかった日や動悸などを感じた日の摂取時刻も確認します。
- 大きなマグを小さなカップへ替え、同じ「1杯」でも飲用量を減らす
- 複数ショットの商品はショット数を確認し、少ない仕様を選ぶ
- 午後や夕方の1杯を、表示を確認したデカフェまたはカフェインを含まない飲料へ替える
- コーヒーだけでなく、茶、清涼飲料水、菓子、サプリメントも一緒に見直す
- 毎日多量に摂っている場合は、一度にゼロへせず、体調を見ながら段階的に減らす
デカフェは、通常品よりカフェインを減らした選択肢ですが、カフェインゼロとは限りません。除去率と一杯当たりの残存量は別の情報なので、具体的な商品の表示を確認します。デカフェを不調の治療手段として扱うこともしません。
急に減らした後の頭痛や眠気などについては、役割を分けたカフェイン離脱症状はいつまで続くかの記事で確認できます。症状が強い、長く続く、ほかの病気が疑われる場合は自己判断せず医療機関へ相談してください。

カフェインの一日量に関するよくある質問
一日400mgなら必ず安全ですか?
必ず安全とは言えません。EFSAが妊婦を除く健康な成人について、安全性の懸念を生じないと評価した一日量であり、推奨摂取量や全員への保証ではありません。症状が出る人、持病・服薬がある人は少ない量でも個別に考えます。
カフェイン200mgはコーヒー何杯分ですか?
杯数だけでは答えられません。厚生労働省掲載の60mg/100mLを同じ濃度と仮定すると約333mLで200mgですが、家庭の抽出や市販商品が同じ濃度とは限りません。容量と商品表示で計算してください。
エナジードリンクは一日何本までですか?
製品によって1本の容量とカフェイン濃度が大きく違うため、本数の共通回答はありません。「mg/100mL」なら実際の内容量へ換算し、「mg/本」なら本数を掛けます。コーヒー、サプリメント、医薬品など同日の他の摂取源も合計します。
デカフェならカフェインはゼロですか?
ゼロとは限りません。通常のコーヒーより少ない商品でも残存する場合があります。除去率だけでなく、一杯・一袋・一缶当たりの表示やメーカー情報を確認してください。
摂りすぎたら水を飲めば早く抜けますか?
水を大量に飲めば直ちに無害化できるとは言えません。追加摂取を止め、商品・量・時刻・症状を記録します。症状がある場合は医療機関を受診し、判断に迷う場合は中毒110番へ相談してください。
参照した公的資料
- European Food Safety Authority:Caffeine(確認日:2026年10月10日)
- EFSA Journal:Scientific Opinion on the safety of caffeine(確認日:2026年10月10日)
- 厚生労働省:食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A(確認日:2026年10月10日)
- Health Canada:Caffeine in Foods(確認日:2026年10月10日)
- 日本中毒情報センター:カフェインを含む食品や眠気防止薬の過量摂取に注意しましょう(確認日:2026年10月10日)
- U.S. FDA:Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?(確認日:2026年10月10日)
まとめ
EFSAの200mgは健康な成人の単回量、400mgは妊婦を除く健康な成人が一日を通して摂る合計量についての評価です。どちらも日本の法的上限や摂取目標ではなく、万人への安全保証でもありません。妊娠中、授乳中、子ども・青少年、持病・服薬・感受性がある人は、対象に合う資料と医療従事者の助言を確認します。
一日の量は杯数ではなく、ラベルの単位と実際に飲んだ容量から計算します。mg/100mLなら濃度×飲用量÷100、mg/本なら表示値×本数です。同じ飲料を別の単位で二重計上せず、食品、サプリメント、医薬品も確認してください。摂りすぎが疑われるときは追加摂取を止め、水・運動・飲酒を解毒法にせず、症状があれば医療機関へ相談します。
