コーヒー豆の商品説明で「カトゥアイ」という名前を見かけたことはないでしょうか。ブラジルやホンジュラス、コスタリカなどで広く栽培されているカトゥアイは、品質と生産性の両立を目指して開発されたアラビカ種の栽培品種です。
カトゥアイには赤い実をつける系統と黄色い実をつける系統があり、産地や精製方法によって味わいも大きく変わります。一方、コーヒーさび病に弱いという欠点があり、高品質な豆を安定して生産するには丁寧な農園管理が欠かせません。
この記事では、カトゥアイが誕生した歴史、親品種から受け継いだ性質、赤実と黄実の違い、主な産地、味、栽培上の長所と弱点、おいしい淹れ方まで解説します。
カトゥアイは産地やブランドの名前ではなく、ムンドノーボとカトゥーラを交配して生まれたアラビカ種の栽培品種です。
第1章 カトゥアイとは
カトゥアイは、アラビカ種に属するコーヒーの栽培品種です。ブラジルで、ムンドノーボとカトゥーラを交配して作られました。
ムンドノーボは樹勢が強く、比較的収量の多い品種です。一方のカトゥーラは、樹高が低く、農園で管理しやすい特徴があります。カトゥアイは、この二つの長所を組み合わせ、樹高を抑えながら高い生産性を目指して育成されました。
カトゥアイは産地名ではない
ブルーマウンテンやキリマンジャロのような地域由来の名前とは異なり、カトゥアイは品種名です。ブラジル、ホンジュラス、コスタリカなど、複数の国で栽培されています。
同じカトゥアイでも、生産国、標高、土壌、気候、精製方法、焙煎度が変われば味も変化します。品種は風味を構成する一つの要素として捉えることが大切です。
カトゥアイの味は品種だけで決まらず、産地、栽培環境、精製、焙煎によって大きく変わります。

第2章 カトゥアイが誕生した歴史
カトゥアイは、ブラジルのサンパウロ州カンピーナスにある農業研究機関によって開発されました。1949年、ムンドノーボとイエローカトゥーラの交配が行われ、当初は「H-2077」と呼ばれていました。
研究者は交配から生まれた多数の木を観察し、樹高が比較的低い、枝の生育がよい、実が多い、品質が安定しているといった特徴を持つ個体を選びました。その種子を次世代へつなぎ、同じ特徴が現れるかを確かめる選抜を繰り返しました。
1972年にブラジルで普及
長期間の選抜を経て、カトゥアイは1972年にブラジルで生産者向けに普及が始まりました。小柄で高密度に植えやすく、収穫や管理も行いやすかったことから広く導入されます。
その後、ホンジュラス、コスタリカ、グアテマラなどにも伝わり、各国で土地の条件に適した系統が選ばれました。現在のカトゥアイには複数の選抜系統があります。
カトゥアイは1949年にブラジルで交配され、20年以上にわたる選抜を経て、1972年から本格的に普及した品種です。

第3章 ムンドノーボとカトゥーラから受け継いだ特徴
カトゥアイの特徴を理解するには、親品種のムンドノーボとカトゥーラを知ることが重要です。
ムンドノーボから受け継いだ生産性
ムンドノーボは、ティピカとブルボンの自然交配から生まれたとされる品種です。背が高く、根や枝の生育がよい、生命力の強い木として知られます。カトゥアイは、比較的高い収量、強い樹勢、枝の良好な生育などを受け継ぎました。
カトゥーラから受け継いだ低い樹高
カトゥーラは、ブルボンから生じた突然変異によって樹高が低くなった品種です。低い樹高は、収穫、剪定、施肥、病害虫対策を行う際に有利です。また、木と木の間隔を狭くできるため、一定面積に多く植えられます。
カトゥアイはカトゥーラほど極端に小柄ではありませんが、ムンドノーボより低く、管理しやすい樹形です。
カトゥアイは、ムンドノーボの樹勢と生産性、カトゥーラの低い樹高と管理のしやすさを組み合わせた品種です。

第4章 レッドカトゥアイとイエローカトゥアイの違い
カトゥアイには、完熟したコーヒーチェリーが赤くなる系統と黄色くなる系統があります。赤い実をつけるものはレッドカトゥアイ、黄色い実をつけるものはイエローカトゥアイと呼ばれます。
レッドカトゥアイ
熟すと果皮が赤くなります。産地や精製によって異なりますが、チョコレート、キャラメル、ナッツ、赤い果実、穏やかな柑橘系の酸味などで表現されることがあります。
イエローカトゥアイ
完熟すると果皮が鮮やかな黄色になります。適切な時期に収穫された豆では、ハチミツ、黄桃、オレンジ、キャラメル、ミルクチョコレートなどを思わせる風味が現れることがあります。
ただし、赤実だから必ずコクが強い、黄実だから必ず甘いとは限りません。標高、日照、土壌、熟度、精製、焙煎なども味に関係します。
レッドとイエローの違いは完熟果の色と選抜系統にあり、果実の色だけで味や品質の優劣は決められません。

第5章 カトゥアイの樹形と栽培特性
カトゥアイは比較的樹高が低く、枝がまとまりやすい品種です。この樹形には、生産者にとって複数の利点があります。
高密度栽培に向いている
小柄なので、農園の条件に合わせて木の間隔を狭くできます。一定面積あたりの本数を増やし、農園全体の収量を高めやすくなります。
収穫と管理を行いやすい
樹高が低いと実を摘みやすく、剪定、施肥、害虫の確認なども比較的行いやすくなります。ただし、急斜面の農園ではカトゥアイであっても多くの手作業が必要です。
多収には十分な栄養が必要
多くの実を育てるには十分な栄養と水分が必要です。施肥不足や実のつけすぎで木が消耗すると、翌年の収量が落ちることがあります。日照とシェードの調整も重要です。
カトゥアイの生産性を引き出すには、高密度に植えるだけでなく、施肥、剪定、日照、収穫量を総合的に管理する必要があります。

第6章 弱点とコーヒーさび病への注意
カトゥアイは生産性と管理のしやすさに優れますが、特に注意が必要なのがコーヒーさび病です。感染すると葉に黄色やオレンジ色の斑点が現れ、症状が進むと落葉して光合成が不足します。
カトゥアイは、親品種と同様に、さび病への高い抵抗性を持っていません。風通し、樹間、シェード、施肥を適切に管理し、感染の兆候を継続して観察する必要があります。
カティモールとの違い
名前が似ていますが、カトゥアイとカティモールは異なる系統です。カトゥアイはムンドノーボとカトゥーラの交配です。カティモール系統は、カトゥーラとハイブリッド・デ・ティモールを交配し、さび病抵抗性を取り入れています。
カトゥアイは高収量で管理しやすい一方、さび病に弱く、安定生産には継続的な観察と丁寧な農園管理が欠かせません。

第7章 カトゥアイの主な生産国と地域
カトゥアイはブラジルで誕生し、現在は中南米の複数の国で栽培されています。
ブラジル
ミナスジェライス州、サンパウロ州、バイーア州などで赤実と黄実の両方が栽培されています。ナッツ、チョコレート、キャラメル、黒糖、オレンジなどを思わせる風味が見られます。
ホンジュラス
1979年に導入され、試験と選抜を経て1983年に普及しました。チョコレートやキャラメルの甘みに、リンゴ、オレンジ、赤い果実の印象が重なることがあります。
コスタリカとグアテマラ
コスタリカではタラスや各バレー、グアテマラではアンティグアやウエウエテナンゴなどでも栽培されます。高地産では透明感のある酸味や複雑な香りを持つ商品があります。
カトゥアイは中南米で広く栽培され、各産地の気候や精製方法を反映した多彩な味を見せる品種です。

第8章 カトゥアイコーヒーの味と香り
カトゥアイは比較的バランスがよく、酸味、甘み、苦味のいずれかが極端に突出しにくい傾向があります。ただし、高地で完熟果を選び、丁寧に精製した豆には、明るい酸味や豊かな果実味が現れることがあります。
ブラジル産ではアーモンド、ヘーゼルナッツ、ミルクチョコレート、キャラメルなど、中米の高地産や浅煎りではオレンジ、リンゴ、赤い果実、桃、花などで表現されることがあります。
購入時には品種名だけでなく、生産国、地域、標高、精製方法、焙煎度を確認すると、好みに合う豆を選びやすくなります。
カトゥアイは穏やかでバランスのよい味を基本としながら、栽培環境と精製によって果実味豊かなコーヒーにもなります。

第9章 精製方法による味の違い
ウォッシュト
果肉を取り除き、発酵と水洗いを経て乾燥させます。柑橘類、リンゴ、花、ハーブなどを思わせる、すっきりした風味が現れやすく、透明感や爽やかな後味を求める人に向いています。
ナチュラル
チェリーを果実のまま乾燥させます。熟したベリー、ドライフルーツ、ワイン、チョコレートなどを思わせる甘い香りが生まれることがあります。
パルプドナチュラルとハニー
果肉を取り除き、粘液質を残して乾燥させる方法です。ウォッシュトの透明感とナチュラルの甘みの中間に位置するような、キャラメルやハチミツの印象を楽しめます。
爽やかさならウォッシュト、果実味ならナチュラル、透明感と甘みの両立ならパルプドナチュラルやハニーが目安です。

第10章 おすすめの焙煎度と淹れ方
浅煎りでは柑橘類、リンゴ、ベリー、花などの明るい香りを感じやすくなります。中煎りでは酸味、甘み、コクがまとまり、キャラメル、ナッツ、チョコレート、オレンジの印象を楽しめます。
中深煎りでは酸味が穏やかになり、チョコレート、黒糖、ローストナッツのコクが強まります。ミルクを加える飲み方やエスプレッソにも合わせやすくなります。
ハンドドリップの目安
- コーヒー豆:15グラム
- お湯:230~250ミリリットル
- 挽き目:中挽き
- 湯温:90~93度
- 蒸らし:30~40秒
- 抽出時間:2分30秒~3分
初めて飲むカトゥアイには、酸味と甘みのバランスをつかみやすい中煎りのハンドドリップがおすすめです。

第11章 似た名前の品種との違い
カトゥーラとの違い
カトゥーラはブルボンから生じた低い樹高の品種で、カトゥアイの親の一つです。カトゥアイはムンドノーボを交配することで、樹勢と生産性を加えることを目指しました。
ムンドノーボとの違い
ムンドノーボは背が高く、樹勢と収量に優れます。カトゥアイはムンドノーボより低く、高密度で植えやすい点が大きな違いです。
カティモールとの違い
カティモールはカトゥーラとハイブリッド・デ・ティモールの交配系統で、さび病抵抗性を取り入れることが主な目的でした。カトゥアイとは異なる系統です。
日本語では「カツアイ」「カトアイ」などと表記される場合もありますが、英字ではCatuaíと書かれます。
カトゥアイはカトゥーラとムンドノーボの交配品種であり、耐病性系統のカティモールとは別の品種です。

第12章 カトゥアイコーヒーの選び方と楽しみ方
カトゥアイを選ぶときは、品種名だけでなく、生産国、地域、赤実・黄実、精製方法、焙煎度を確認しましょう。
ナッツやチョコレートの風味ならブラジル産、爽やかな酸味や果実味ならホンジュラス、コスタリカ、グアテマラなどの高地産が候補になります。ただし、国ごとの傾向がすべての商品に当てはまるわけではありません。
すっきりした味ならウォッシュト、甘みと果実味ならナチュラル、両者のバランスならパルプドナチュラルやハニーを目安にします。赤実と黄実、あるいは精製違いを飲み比べるのもおすすめです。
焙煎日を確認し、豆のまま密閉して光、高温、湿気、酸素を避けて保存します。淹れる直前に必要な量だけ挽くと香りを楽しめます。
カトゥアイを選ぶときは、生産国、地域、赤実・黄実、精製方法、焙煎度、焙煎日をまとめて確認しましょう。

まとめ
カトゥアイは、ブラジルでムンドノーボとカトゥーラを交配して作られたアラビカ種の栽培品種です。ムンドノーボの樹勢と生産性、カトゥーラの低い樹高を受け継ぎ、高密度で植えやすく、収穫や管理を行いやすい特徴があります。
一方、コーヒーさび病への高い抵抗性はありません。多くの実を育てるには十分な栄養が必要で、施肥、剪定、日照、病害対策が重要です。
完熟果の色によってレッドカトゥアイとイエローカトゥアイに分けられますが、色だけで味や品質は決まりません。産地や精製によって、ナッツ、チョコレート、キャラメルから、柑橘類、リンゴ、ベリーまで多彩な風味を楽しめます。
カトゥアイは高い生産性だけでなく、産地と作り方によって多彩な味を表現できる、世界のコーヒー生産を支える重要な品種です。

